恋愛

女々しいとは、男のためにある言葉

女と女。

二つ並べると、『めめしい』の読みに。

三つ並べたら…

今日は、そんな夜の会話ではない。

昨夜は、ふいのお誘いで楽しい夜を過ごしたのだけれど、自分の回想も含めて、『女々しい』とは、男のためにある言葉だと認識した。

女の対極にあるのが、男。

男らしい。

雄雄しい。

男が、芯の通った生き方をするのを鼓舞するため、応援するための言葉。

益荒男ぶりを出すことこそ、男の本分。

しかし、雄という動物学的に攻撃性の強い性を持つ筈の男は、実は、子供を産めないため、たおやかで優しい防御性(母性)の強い性を持つ女よりも、遥かに弱い。

特に精神的に弱く、すぐに心折れる。

だから、応援する言葉が必要なのだ。

デューク東郷(ゴルゴ・サーティの主人公)のような強い、男の中の男とはそうそう存在しない。

恋に破れては見えないところで泣き、愛を失っては崩れ落ちる。

俺はかつて大阪に住んでいた。

理由あっての一人住まい。

家族を残しての一人住まいをしていた。

そこで、道ならぬ恋に落ちてしまった。

既に、終劇して3年を経過した恋の遺産を飾り立てる事も無ければ、そこに戻りたいとも願わない。

『彼女、シャネルのCocoをつけてたんだ…』

俺の昨夜の独り言。

芳香とともに、その恋の終わりの瞬間が記憶の奥底から一瞬浮かび上がった。

俺は、大好きだった筈の彼女が身に纏っていた香りの正体すら知らなかった。

そして回想。

或る朝、彼女はいきなり俺の部屋を訪ねてきた。

『話したいことがあるから、明日の朝、部屋に行ってもいい?』

そう予告はしていた。

終焉の予感が胸を締め付ける。

『もう会うのやめよ。わたしの気持ちが無くなってん…あんたが、ここにおってくれたら…でも、おれへんようになるの分かってるし、そう分かってるから、心が減ったんよ。気持ちが減ったんよ』

真っ直ぐ大きな目を見開き、俺の目を見つめながら告げる彼女。

『そうか…分かった』

『お前のために作ってやれる最後の朝食や、食べていき…』

何とか男の面目を保つ俺。

食事の後、いつものように玄関先まで見送ってやる。

後ろからのハグ。

ふわっと柔らかい、優しく包み込むように、後ろから抱きしめる。

そんなハグを、いつも別れ際にしていた。

くるりと振り向き、笑顔の彼女。

『楽しかったよね』

『ああ…』

真正面からのハグ、そして別れのキス。

バタン。

扉しまる扉。

扉に背をもたれかけさせ、滑り落ちるようにしゃがみこむ俺。

遠ざかる足音、やがて消えてゆく。

天を仰ぎ見るが、扉閉ざされて暗い天井しか見えなかった。

泣かなかったけれど、暫く、立ち上がることができなかった。

2ヶ月前に体調を崩し入院と自宅療養を重ね、失職に至った俺は。

単身赴任先のそこを、すぐに引き払わなければならなかった。

失職の決定と失恋。

ダブルパンチで、みごとに心折れた。

何の目的があったわけでも、彼女に付き纏うような行為もしなかったが…

自費で1ヶ月も、その大阪市中央区内の2Kの広さを持つマンションの退去を伸ばしてしまった。失ってしまった彼女の香りを探し求める、残心を抱えたまま。

そんな3年前の春の話。

女々しい男の姿の回想。

俺に終演の一瞬の記憶を呼び覚ましたのは、その香水の芳香。

だが、その正体が何だったのかを昨夜、知った。

シャネルのCoco。

そんなことすら知らなかった。

愛の深さ。

情の深さがあればこそ、失職よりも遥かに強いダメージを受けたのだろう。

だが、終わってしまえばそれまで。

回想の中の一シーンでしかない。

そんな回想を俺にさせたのは、もう一人の男の女々しい姿と、とある振舞い。

格好良かった筈のオヤジさんの、物悲しさを誘うような姿。

『やっぱり、格好良く生きなあかんな!』

新鮮な朝の空気を胸一杯に吸い込みながら、大阪弁の独り言。

東の空が、宇宙色から地球の青へと移りゆくのを見ながら、車の中で聞かされたBGMを口ずさみ、暫く歩道を歩く俺。

“もしも願いが、叶うなら。吐息を白い薔薇に変えて~♪”

徳永の甘い歌声を真似てみるが、全然出ない(苦笑)。

いつか、こんな情熱を持って生きれるように、

やっぱ格好良うしとかんとあかんねんっ。

背中押してくれた、あいつに失礼やもん…

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