男子ゴハン。
なる名前の番組が、日曜の昼前に放映されていた。
料理研究家、ケンタロウ氏が、ジャニーズ系タレントの一人と組み料理を作る。
番組終盤で、恐らく汐留かどこかのオープンテラスで美味しく食して、お終い。
そんな週一の番組を見るのが好きだ。
ケンシロウ氏の手際が実に良い。
そりゃそうか…
プロの調理師であり、しかもその代表のようなもの。
だからこそ、公共電波に乗って料理を作っている。
誰かに聞いた話では、著名な女性料理研究家のご子息らしい。
幼い頃から、間違いなく妥協無き料理を食してきた地盤がある。
時に、仲間内で、タコ焼きとか、お好み焼きを食べたり、
マックなどのジャンクフードを食した経験があったとしても。
ベースは凝った料理を食してきた経験を持つ、食=味覚のエリートである。
競演のジャニーズタレントのK君の反応、単純だけに伝わりやすい。
『うま~い!』
この一言と、大きな目を見開いた表情。
間違いなく、美味しいのだ。
人間が生きていく中で、イの一番に必要不可欠な欲求である食欲。
だからこそ、その感覚に疎いごく一部人間を除いて、味覚神経は敏感。
美味しいものを食べた時に見せる人の表情は、
その敏感な欲求を満たしているだけに、
そりゃあもう、幸せそうな顔となる。
俺は、そんな幼い頃からの食=味覚のエリートじゃない。
そこまで、味のディテールにもうるさくない。
が、美味しいものが好きだし。
何と言っても、魅せてくれる料理が好き。
取り分けする時だって、無意識ながら、割と綺麗に盛り付ける。
作り手に失礼だから。
料理するのは嫌いじゃなかった。
両親共働きで、鍵っ子だった。
一聞、軟派に聞こえるけど、真面目に取り組めば、相当にハードな庭球部。
成長期に、一日の練習で数キロ痩せるほどハードの練習をこなせば、
腹が減る。
自宅に戻っても、親はいない。
姉は美術系に長けているが、料理は決してうまくない。
絵は、尊敬するほど巧かったのだが…
それに市内の中心街に通学していたから、俺と同じくらいか、少し遅いぐらいの帰宅。
妹は、選手選抜を受けるほどのバレーボールプレイヤー。
これまた、腹を空かしている。
冷蔵庫にある食材を、見よう見真似で調理して、料理にする習慣が出来た。
何も分からずに調理してたから、
最初はかなり酷かった。
例えば、お味噌汁(みよつけ)の出汁を取る事を知らず、
具らしい具だけを煮温めて、味噌だけ混ぜる。
美味いわけが無い。
『お兄ちゃん、これ美味しゅうないよ…』
と妹の一言。
グサリっ!
従兄弟が料理学校の先生をしていたので、
何気ない会話。
『ねえねえ、〇〇〇姉ちゃん、美味しい味噌汁が作れんのじゃけど、どうすりゃあ、美味しゅうなるんじゃろうね?』
『ちゃんと出汁取っとるんね?』
『何それ?』
『・・・』
基礎から教えてもらった。
妹の反応が段々と変わってくる。
一緒に暮らしていた、ばあちゃん(その当時で既に80歳を超えていたが)まで食べたがるようになった。
さらに、料理好きのフレームを確かにしたのは、大学時代のアルバイト。
何気ない気持ちながら、友人の紹介でホテルの厨房で働くことになった。
最初はホール係要員だった。
だって、背高いし、そこそこ女性受けの良い容姿してたから。
だが、俺は敢えて調理場勤務を志願し続けた。
コックさんの山高帽がとにかく・・・、
すげ~っ格好良かった!
元暴走族の№2とか、ヤンキー出身の人が多くて、時に荒々しい職場だったが、
大きな俎板の上で、あっと言う間に綺麗に刻まれていく食材の数々。
それらが、フライパンの上で華麗に踊る。
『ボッ!』
仕上げ前の、フランベの青くて赤い炎。
アルコールの青と、油の赤。
炎が混ざり合い競演する。
そして、
うっとりするほど綺麗に整然と、まるで美術品のように仕上げる盛り付けが待っている。
『なんて素晴らしい技なんだろう…』
授業が終わり、キャンパスから30分ほど車を運転したところにある、そのホテルの厨房に入るのが楽しみになった。
レストランの支配人は、その後も度々ホール係を打診してきたが、
俺、全く耳を貸さなかった。
厨房の中の楽しさは、何にも変え難かったから。
皿洗いや、調理器具洗いの合間に見る風景。
そのうち、コックさん達にも努力を認めてもらい。
洗い物の手が空けば、まず声を掛けられるようになった。
『デミグラスソース作るけえ、混ぜ役やってくれ!』
寸胴鍋の前で、ボート漕げる程大きなヘラを握り、縦に押し、右の淵をなぞるように手元に引き、中央に戻したら今一度縦に押し、今度は左の淵を回してサーキット一周終了。その周回を幾度も幾度も繰り返し、絶対に焦がさないように気を配る。
焦げれば寸胴鍋一杯分のソースが台無し。苦味が出てしまうから。
それが分かっているからこそ、コックは真っ先に俺に託した。
知らず知らず、信用されるようになっていた。
ある時、帝国ホテルの有名なコックさんの下で修行をした凄腕コックがやって来た。
両手に最大級のフライパン抱えた状態で、ステーキを8~10枚以上同時に焼ける程の人だった。
包丁捌きがまた、只者では無かった。
洋ナシの皮剥きを見てて、
『はぁ~、ほぉ~』 と、
ハ行感嘆詞ばかり。
まるで、瞬時に剥かれていく感じだった。
丸2年近く一緒の時間を過ごして、そのコックさんにこう言われた。
『お前、コックやる気ないか?』
少しは見所があったらしい。
とにかく、門前の小僧よろしく、ずっと観察していた。
それに気付いていらした様子。
だが親の反対。
特にオヤジの大反対に遭う。
そりゃそうである、コックにするために大学にやったわけじゃない!
そういう時代だった。
俺は、大学を卒業すると同時に、神戸の百貨店に就職した。
バイト先に内定の挨拶に行くと、そのコックさんがメモを手渡してくれる。
どうやら、神戸のホテルにお弟子さんが勤めているらしい。
半年後、外貨両替商の集いがそのホテルで開かれ、俺が出席することになった。
宴会係の黒服さんに、その方の名前を告げて挨拶したいと申し出ると、
山高帽のコックさんが颯爽とやって来た。
『〇〇さんのお知り合いとか…、お元気になさってましたか?』
暫し歓談をする。
やっぱ俺、凄い人のスカウトを受けていたようである…
4回生の頃には、サラダやフルーツ程度の盛り付けは任されていたので、今も料理の盛り付けなどは大好き。
魯山人先生のような、深く高い見地があるわけじゃないが、
作る料理によって、食器の色目や形などを変えたい人。
ライセンス持って無いからプロでは無いが、プロ意識の端っくれぐらい持っている。
人様から御代を徴収するような場での調理は、最善を尽くすようにしている。
例えそれが食材費のみだったとしても。
年に一度か二度程度だが、行き着けのダイニングバーの厨房を借りて、顔見知りの常連客相手にお好み焼きとか、その他の料理を出す。
こんな事があった。
ご意見番といえる、そこの目上の常連さんからお叱りを受けた。
これまた常連のYちゃんのお子さんのために、ソーセージを炒めた。
我慢の効く大人共は後回しっ、子供最優先である!
大人たちの料理の調理に移って暫くしたところで、
『お代わり!』の声。
それぐらいなら、お好み焼き焼く横目で、ストーブ(ガス台)の上でプライパンで調理できるっ。
そう踏んだ俺は、焼き始める。
だが、お好み焼きだって数枚を同時に焼いている。
少し目を離した瞬間に、焦げ目がついてしまった。
ソーセージはもう、オシマイだし。
うーん、どうしよう…。
迷った末に出すことにしたのだが、
ご意見番の目に留まったのか、はたまた食したのか。
『〇〇っ!、これ焦げてるべっ?』
叱責。
これは効いたね。
自分が迷った末に出した失敗作だったから…
オーナーのY君は俺を庇ってくれたけど、素直に詫びた。
自分の過失が分かってたから。
プロじゃないけど、プロ意識は捨ててはならない。
自宅での料理は別だけれどね。
今日は、キノコのホワイトソースにカジキマグロのソテーを乗せた料理。
カジキマグロに塩コショウ少々の下味つけて、フラワーまぶして、バターで小麦色になるまで焼いて、このソースの上に置くだけ。
料理は熱々のうちに子供達に食べさせたいので、撮影はベースとなるソースまで。
この上に乗る小麦色のソテー、想像してください。
ホワイトソースの料理や、白っぽい料理には、好んで黒や濃紺の食器を使う。
ホワイトソースは、メイン食材の上に掛けるより、お皿に敷くような感じが多い。
種のグジュグジュを取り除いた、トマトの微塵切りキューブをパラパラ。
今日は横着して、市販の刻みパセリをパラパラ。
生パセリ刻んで、晒で絞ってパラパラする方がベター。
それと、GW期間中に肉食が続いていたので、内臓を休めるための料理。
メカブ昆布、納豆、山芋、オクラに卵の黄身を加え、出汁醤油、トッピングはカツオ節、おぼろ昆布に青ネギ。
『Never Never丼』の元の出来上がり。
これはとっても健康に良いので、オクラの流通するシーズンになるとちょいちょい作る。
納豆に付属している和カラシじゃなく、ワサビを合わせるのがポイント。
最後にお味噌汁。
頭飛ばした炒り子で取った出汁ベースに、今日は、自作取り置きのエビの殻の粉末を加えてエビ風味。エノキ茸と筍と青ネギを具に加える。
このエビ殻の粉末使えます!
エビフライなどの料理で捨てる所。
時々、残して作ります。
真水で綺麗に洗い、電子レンジでチンして水気を飛ばす。
ミルサーで粉末にして出来上がり。
エビ風味を強く出したい時のサプリメント。
タッパーウエアに詰めて、フローズンパレットの上で保存している。
今日も、何とか…
『美味しいね』
と言わせるぐらいの料理が出来ました。
ケンタロウさんか…
ケンザブロウは、偉い作家先生みたいで大仰だな。
ケンシロウは、『北斗の拳』の主人公みたいで、今より更にごついイメージ。
エヘン!
さながら、俺はケンジロウだね。
と自分で思い込んでいる。
『うま~い!』
その一言を言わせたくて。
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