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自然美も人工美も、美は美!

『俺なぁ、どうしても、ここの(神戸の)夜景を綺麗とは思われへんねん』。

社会人になって、まだ数年しか経過していない俺に、仕事を一から教えてくれた先輩の口癖。

その当時、俺達は『超』がつくほど自然大好きアウトドア派だった。

先輩の車にロッドを数本積み込み、何百kmの距離を走破して、たった一尾の魚を追い求めた。

薄っすらと金色がかった、銀色ボディのシーバス。

銀鱗を持つこの大型魚は、釣り上げられる直前、その瞬間に激闘の興奮色を体に浮かび上がらせる。

その時に、少し金色(こんじき)に色を放つ。

死を賭した必死の戦いの後だけに、彼らの放つ興奮色は美しい。

俺達はそいつに会いたくて、狩猟に似た感覚で、獲物の匂いを嗅ぎ取ろうと彷徨った。

大きな川の河口。

防波堤の際に並べられた、波消しテトラポッドの突起の上。

ゴロタ浜…

色んなフィールドに、色々なルアーを持ち込み、彼らに勝負を挑んだ。

朝焼けに光る水面に二人並んで、キャスティングを繰り返す。

そんな二人の、釣り紀行の合間の言葉だった。

入社したのは、神戸の中心にある百貨店。

百貨店のルーキーは、よほど酷くなければ、何もせずとも女子にもてた。

館内における、男子と女子の人口密度比率の圧倒的な差がもたらす特異現象。

『身内と遊ぶな!』

そう人事通達が出れば、その身内女子が連れてくる女子と遊ぶ。

それに、俺は何もしない人ではなかった。

誰にも増して面倒見が良く、気の良い新人。

かなりの自画自賛(笑)!

異人館通りを少し入ったところにある、『ビーナスブリッジ』と呼ばれる螺旋歩道橋。

そこから見下ろす神戸の夜景は、とても綺麗だった。

よく、気の合った女の子と夜景を見に歩いて行った。

お酒飲んだ後、手をつないだり、腕を組んで。

インスタント・ラブであっても、瞬間の気持ちの盛り上がりを演出してくれる景色だった。

そうした軟派三昧の4年間を経て、部署異動で知り合った『超ド級』アウトドア派の先輩。

『漁師になれっ!』

暇を見つけては、地元広島で、海にばかり出かけていた俺。

あきれた親父が投げかけた言葉。

そんな素地があったせいか、慣れない・・・?軟派生活に疲れていたせいか、

『〇〇〇、海に行くで~ぇっ!』

の言葉に、即、応じた。

その当時は、百貨店にも定休日があった。

週一の木曜日は、先輩との釣り三昧に明け暮れた。

『彼女』という特別な存在がいなくても、全く平気だった。

海が、俺達を待ってたから…

最近は、年齢のせいか海に出かけなくなったな。

関東の海は、関西の海に比べて水が澄んでいないのと、数回のトライで良い釣果が得られなかったから。

平塚の沖へ出る乗合船での釣行のみ、俺の狩猟欲を満足させる結果を得られたが、やはり先輩のような『ツレ』がいないからだろう。

カツオを十数本、メジマグロ2本を釣り上げても尚、あの和歌山の沖で、激闘の末に釣り上げたシイラやカンパチに比べると、数段物足りない。

そんな理由、こんな理由を自分に押し付け、釣りには出掛けなくなった。

冒頭の先輩の言葉。

あの当時は、まだ全然若かったから、人の言葉によって自分が左右されていた。

大波に揺れる小船のような不安定さ。

『俺も、自然の造形美の方が大好きっす!』

『ビル街のイルミネーションが煌く夜景なんかより、この月の光が柔らかくゆらぐ水面を見つめてる方がいいっす!』

その先輩の嗜好に、完全に感化されていた。

一緒に何かを追い求める『ツレ』の居なくなった今。

歳を重ねた今。

一匹狼の俺は視野も嗜好も広げた。

六本木、丸の内、新宿、池袋の高層ビル街が輝く夜景も美しい。

水平線をゆっくりと登ってゆく来光も美しく、その逆の沈みゆく去光もまた美しい。

建物の描き出す、直線や曲線の交差も美しい

森の朝靄の中、静かに佇む木々の姿も美しい。

人工美も、自然美も、美しいものは美しい。

綺麗な物は、とにかく綺麗。

そう感じられるようになった、俺がいる。

しっかりとした自分を持った、俺がいる。

自由に動ける身じゃないから思うのだろうけど、不器用だった若い頃の俺と違い、今、恋愛させたら達人だろう。

もし、ビーナスブリッジに二人並んで立っていて、少しでも肌寒い風に吹かれたなら…

自然な動きで、たぶんコート脱いで、相手の肩から、『ぱさりっ』、そっと、かけてやれたりできるから。

今さら、そんな事など、どうでも良い。。。

そう!

美しいものは、美しい。

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