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会話は自己認識 PartⅠ

今日は、One on one で女性と向き合って話す機会が多かった。

『向き合って話す』 のは、別に色気のある話ではない。

色気のある関係での二人の会話は、テーブルを挟む場合には、少し斜め位置で着席をするか。カウンターに向かって、肩を並べて座って交わす方が自然だ。

なぜなら、そっちのほうが、抱擁も、Kissもしやすくくて道理にかなっている。

だから、今日はそんな二人きりではない。

一人目は、もう10年来のつきあいになるかつての同僚であり、同志。

俺が、ドメ中のドメである百貨店から外資に転職をして間もなく、彼女が同じ会社に転属してきた。大きな外資グループ会社だったので、彼女は他のカンパニーからの移籍だった。

『へぇ、こんなに若くて綺麗な女性が、キーとなる部署のマネージャーとしてバリバリに働くんだ、やっぱ外資ってとこは違うな・・・』が最初の感想だった。

彼女は実に良く働く有能な女性。仲良くなったのは、事務所移転でブースが背中合わせになってからだった。

俺の仕事は、いわゆる苦情相談をメインとした部署の責任者であり、小売の末端で働くスタッフの相談役、いわばカウンセラーの役目も兼務していた。

『ほんと、楽しそうにスタッフの相談に乗ってあげるんですね。声のトーンが明るくて、聞き耳を立てるのじゃなくて・・・そう、聞き入ってしまいました』

ある地方のスタッフから暗く重たい相談を受けた後だった。

別にそこまで自分を追い込む程の問題でも無かったので、気分的に落ち込んでいたその女性スタッフの気持ちを軽くさせるため、馬鹿な話ばかり並べ立てた。当時は、まだ関西を経て上京したばかりだったので、ほぼ漫才師状態だった。

俺は、彼女を笑わせるためだけに、話を連ねた。自身の失敗談、どうやって気持ちを楽に運んでいっているのか・・・

想像力を働かせて気持ちを別のところにやる。その軽い逃避行動への誘いだった。

ほんの些細な事に、大きな目くじらを立てて、何度も何度もしつこく人を攻撃してくる輩は存在する。恐らく、自分の中の闇を隠し通せず、どこに鬱屈した感情をぶつけて良いのか分からないから、絶対に反撃して来ないサービス業に従事するスタッフに狙いを定めて攻撃してくる。

大きな心を持ち得ない、根っからの小者である。

小者であるからこそ、尊大な態度を取り、傲慢で利己的な欲求を突きつけてくる。憐れな人々である。

『あんなぁ。こんなん口に出したら怒られるけど、世の中にはクレーマーと呼ばれる一握りの人間がおんねん。クレーマー対策法でも施行して欲しいくらいやけど、それも叶わんから、そんな奴等から悪い気をうけたらな、溜め込まんと出さなあかんねん。』

『俺の知ってるある人は、奥のストックルームに入るや否や、空きパッキンを拳でどつき倒してた。何や空手の有段者らしいけど、物に当たるだけエライなぁと感心したね』

『俺自身はね、そこまで腹立てる前に、自分の気を空想世界に半分逃がしてるね』

『北朝鮮に強制送還したってんねん、頭の中で。』

『ワレ、ごじゃごじゃ文句抜かしとったらメシ食われへんとこに送ったんでぇ』

『メシ食われへんだけやったらまだマシや。後ろからドカンっ!とヤられんでぇ』

『なっ、一緒に北朝鮮に送り出したろっ!万なんとか号が新潟港から定期出航してるがな』

『どうや?少しは気ぃ楽になったか?』

受話器の向こうで笑いをこらえている雰囲気が伝わってくる。

心理面のケアが終われば90%完了。後は、どう落とし前をつけていくのか、着地点の探し方という実践テクニックを10%だけ教えればOK。平常心を保ち接遇をできる状態にできれば、私の役目は終わり、アドバイスは成功する。

その受け応えを途中から聞き入っていた、その女性管理職が俺に声をかけてきたのが親交の始まりだった。

それからは、薀蓄語りの俺に、色んな相談を持ちかけてくるようになった。やれ目録の書き方、個人情報保護というコンプラの基本についての整理、ストーカー被害にあっている女性スタッフへの危険防止アドバイス。二重就労をしている!と通報された従業員の素行調査。

最後のヤツ。素行調査は、我ながら面白かった。

その通報されたスタッフは九州エリアの子。水商売の店で働いているとの話。おたくのような一流企業が放置していて良いのか?が、ある有名消費者からの苦情相談。

私がその女性管理職に代わり、その有名芸術家の先生(そろそろ人間国宝になるのかな・・・陶芸血統だけはあった様子なので。人間的には小さかったな)の相手をする。

『そこまでおっしゃるならば、勤めてると疑われている店の名前、源氏名などお分かりになるんでしょうかね・・・』

『当たり前でしょう。何のために通報していると思ってるんですか。』

店の名前はよくある、平たい横文字カタカナ名だった。もう記憶にない。

源氏名の方は、そのスタッフに顔立ちが似ている芸能人名だったので、そこは妙にリアルだった。ご丁寧に、店の電話番号まで教えてくれた。

しょうがない・・・客のふりして電話するしかないな。

そこからは演技である。

午後9時半を回ったころ受話器を手にとりプッシュボタンを押す。

呼び出し音2回ほどで、元気の良い男性スタッフが応答する。客商売としては合格だ。

『あ、もしもし、〇〇ちゃん出勤してますか?』

『〇〇は退職したのですが・・・』

『ええっ本当ですか?俺、今、東京から電話してるんですよ。次にこっち来ることあったら連絡してねって名刺までもらったんだけど・・・』

『芸能人の〇〇ちゃんに似て可愛かったですよね? 何処に行っちゃったんだろう・・・うーん残念!』

他にも、美人揃いだから是非来店を! と薦める男性スタッフに、愛想ばかりの『じゃ、今度行きます』と一言残し電話を切る。

直後に、女性管理職から、その従業員に嫌疑のあることを通告して、聞き取りを行う。もちろん、本人からは、事実無根である!との回答が戻る。

彼女の電話応対の終了と目配せを見て、俺はすかさず、その陶芸家先生に電話を入れた。

『素行調査をしましたが、事実確認はできませんでした』

そう告げた。

これ以上の詮索は人権上の配慮の問題、プライバシーに関わるため企業としても立ち入れない。と明確に回答をして終了。

実に良いコンビネーションプレイだった。

聞けば、その陶芸家先生はかなりの艶福家らしく、お買い物もしてくれるが、スタッフへのお誘いも強引だったらしい。

格好悪い。お金出せば、何をしても許されるってものじゃない。例え芸術家としての才があっても、人間感情の才が全く無い。

そんな格好悪い行動を取れば、女性が絶対になびいたりはしない。。。とは感じないらしい。センスが無い。

そんな事があった後、我々二人にはお互いに対する信頼関係が生まれ、5年間を共に同じ会社で過ごした。

今日、久しぶりに再開して、彼女が一言。

『〇〇さん、また痩せたんじゃないですか?激務続きのようですね・・・』

真から心配してくれている顔が、そこにあった。

『いや~、トシのせいですよ。初めて出会った頃からすると、ぐっと老け込みましたからね(笑)』 

お互い目線を交わし、笑顔と笑顔。

彼女は良い年齢を重ねている。

結婚をしても決して所帯染みず、相変わらず洗練された雰囲気を醸しだしている。

そんな彼女との、実に楽しい30分ほどの面談を終えて、行き着けのバーへと足を向ける。

思ったより長編になったので、睡眠時間確保のため続く・・・

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